📐 金融工学の基礎

デュレーションと金利感応度:債券投資の必須指標「金利1%上昇で価格が何%下がるか」を計算する方法

📅 2026.06.04📖 約8分🎯 中〜上級✍️ マネトモ編集部

「債券は安全資産」——これは半分正しく半分誤りです。債券には金利リスクがあり、金利が1%上昇すると残存期間10年の国債は約9%価格が下落します。この金利感応度を数値化した指標が「デュレーション(Duration)」です。バランスファンドや債券ETFを保有するなら必須の金融工学知識で、ポートフォリオの金利リスクを正確に把握できるようになります。

📋 この記事の目次
  1. デュレーションとは何か:加重平均残存期間
  2. 修正デュレーション:価格変動率を計算する
  3. 金利変化と債券価格:実際の影響をシミュレーション
  4. コンベクシティ:デュレーションの限界を補完する
  5. 実践:債券ETFのデュレーションを確認して使う方法

デュレーションとは何か:加重平均残存期間

デュレーションとは、債券から受け取るすべてのキャッシュフロー(利子+元本)を現在価値に割り引いた上で、受け取り時点を加重平均した「時間」です。マコーレー・デュレーション(Macaulay Duration)とも呼ばれます。

直感的な理解として:クーポン(利子)なしの割引債(ゼロクーポン債)なら、デュレーション=残存期間です。クーポンがある債券は、途中でもキャッシュを受け取るため、デュレーション<残存期間になります。

📐 マコーレー・デュレーションの計算式
D = Σ [ t × PV(Cₜ) ] ÷ P

t = キャッシュフロー受取時点(年)
PV(Cₜ) = t期のキャッシュフローの現在価値
P = 債券の現在価格(全キャッシュフロー現在価値の合計)
例:表面利率3%・残存5年・YTM(最終利回り)3%の債券のデュレーション ≈ 4.58年
ゼロクーポン債(利子なし)なら:デュレーション = 残存期間(5年)

修正デュレーション:価格変動率を計算する

投資家が実際に使うのは修正デュレーション(Modified Duration)です。金利が1%変化したときに債券価格が何%変化するかを直接示します。

📐 修正デュレーションと価格変化の関係
修正D = マコーレーD ÷ (1 + YTM)

価格変化率 ≈ − 修正D × 金利変化幅(%)

例:修正D = 8.5、金利+1%の場合
→ 価格変化 ≈ −8.5 × 1% = −8.5%
マイナス符号は「金利が上がると価格が下がる」逆相関を示します。
この近似式はデュレーション(線形近似)によるもので、大きな金利変化には後述のコンベクシティ補正が必要です。

金利変化と債券価格:実際の影響をシミュレーション

「金利が1%上昇した場合」の価格変化を、残存期間別に比較します。

📊 金利1%上昇時の債券価格下落幅(修正デュレーション近似)
短期国債(残存1年)
約 −1%
中期国債(残存3年)
約 −2.8%
中長期国債(残存5年)
約 −4.5%
長期国債(残存10年)
約 −8〜9%
超長期国債(残存30年)
約 −20〜22%
表面利率・YTMにより多少異なります。クーポン率が低いほどデュレーションは長くなります。日本国債(JGB)を参考に概算。

2022〜2023年の米国金利急上昇局面では、この理論が現実に示されました。FRBが政策金利を5%超まで引き上げた結果、長期債ETF(TLTなど、修正D≈16)は一時40〜50%の価格下落を記録しました。「安全資産の債券」が株式以上の下落幅を記録したのは、デュレーションが高かったためです。

コンベクシティ:デュレーションの限界を補完する

デュレーションは金利変化と価格変化の線形(一次近似)関係を示しますが、実際の債券価格と金利の関係は凸型の曲線(非線形)です。この非線形性を捉える指標がコンベクシティ(Convexity)です。

コンベクシティが高い債券は、金利が上がると理論値より価格が「あまり下がらず」、金利が下がると理論値より価格が「より大きく上がる」という非対称な特性を持ちます。同じデュレーションなら、コンベクシティが高い債券のほうが投資家にとって有利です。

📐 コンベクシティ補正を加えた価格変化式
ΔP/P ≈ −修正D × Δy + ½ × C × (Δy)²

C = コンベクシティ、Δy = 金利変化幅
大きな金利変化(±1%超)の場合はコンベクシティ補正が重要です。
通常の金利変化(±0.25〜0.5%)では修正デュレーションだけで十分な精度です。

実践:債券ETFのデュレーションを確認して使う方法

実際の投資判断でデュレーションをどう活用するか、具体的な手順を説明します。

債券ETF例修正デュレーション目安金利1%上昇の影響金利リスク
超短期債ETF(SHV等)0.3〜0.5年約 −0.4%
短期国債ETF(SHY等)1.8〜2.0年約 −1.9%
中期国債ETF(IEI等)4.0〜4.5年約 −4.2%
総合債券ETF(AGG/BND)5.5〜6.5年約 −6%
長期国債ETF(TLT等)15〜17年約 −16%

ポートフォリオのデュレーション管理

債券ETFのデュレーションはETF発行会社のウェブサイト(iShares・Vanguard等)の「ファンド特性」欄に記載されています。日本の証券会社の外国ETF詳細ページでも確認できます。

📌 デュレーションのポイント整理

① デュレーションは「債券の金利感応度」を示す指標——残存期間が長いほど高くなる
② 修正デュレーション×金利変化幅 ≈ 債券価格の変化率(マイナス方向)
③ 金利1%上昇:残存10年国債 ≈ −8〜9%、超長期30年 ≈ −20%超の価格下落
④ コンベクシティは非線形の補正項——大きな金利変化時に重要
⑤ 債券ETF選択時は「修正デュレーション」を確認して金利リスクを把握する

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