デュレーションと金利感応度:債券投資の必須指標「金利1%上昇で価格が何%下がるか」を計算する方法
「債券は安全資産」——これは半分正しく半分誤りです。債券には金利リスクがあり、金利が1%上昇すると残存期間10年の国債は約9%価格が下落します。この金利感応度を数値化した指標が「デュレーション(Duration)」です。バランスファンドや債券ETFを保有するなら必須の金融工学知識で、ポートフォリオの金利リスクを正確に把握できるようになります。
デュレーションとは何か:加重平均残存期間
デュレーションとは、債券から受け取るすべてのキャッシュフロー(利子+元本)を現在価値に割り引いた上で、受け取り時点を加重平均した「時間」です。マコーレー・デュレーション(Macaulay Duration)とも呼ばれます。
直感的な理解として:クーポン(利子)なしの割引債(ゼロクーポン債)なら、デュレーション=残存期間です。クーポンがある債券は、途中でもキャッシュを受け取るため、デュレーション<残存期間になります。
t = キャッシュフロー受取時点(年)
PV(Cₜ) = t期のキャッシュフローの現在価値
P = 債券の現在価格(全キャッシュフロー現在価値の合計)
ゼロクーポン債(利子なし)なら:デュレーション = 残存期間(5年)
修正デュレーション:価格変動率を計算する
投資家が実際に使うのは修正デュレーション(Modified Duration)です。金利が1%変化したときに債券価格が何%変化するかを直接示します。
価格変化率 ≈ − 修正D × 金利変化幅(%)
例:修正D = 8.5、金利+1%の場合
→ 価格変化 ≈ −8.5 × 1% = −8.5%
この近似式はデュレーション(線形近似)によるもので、大きな金利変化には後述のコンベクシティ補正が必要です。
金利変化と債券価格:実際の影響をシミュレーション
「金利が1%上昇した場合」の価格変化を、残存期間別に比較します。
2022〜2023年の米国金利急上昇局面では、この理論が現実に示されました。FRBが政策金利を5%超まで引き上げた結果、長期債ETF(TLTなど、修正D≈16)は一時40〜50%の価格下落を記録しました。「安全資産の債券」が株式以上の下落幅を記録したのは、デュレーションが高かったためです。
コンベクシティ:デュレーションの限界を補完する
デュレーションは金利変化と価格変化の線形(一次近似)関係を示しますが、実際の債券価格と金利の関係は凸型の曲線(非線形)です。この非線形性を捉える指標がコンベクシティ(Convexity)です。
コンベクシティが高い債券は、金利が上がると理論値より価格が「あまり下がらず」、金利が下がると理論値より価格が「より大きく上がる」という非対称な特性を持ちます。同じデュレーションなら、コンベクシティが高い債券のほうが投資家にとって有利です。
C = コンベクシティ、Δy = 金利変化幅
通常の金利変化(±0.25〜0.5%)では修正デュレーションだけで十分な精度です。
実践:債券ETFのデュレーションを確認して使う方法
実際の投資判断でデュレーションをどう活用するか、具体的な手順を説明します。
| 債券ETF例 | 修正デュレーション目安 | 金利1%上昇の影響 | 金利リスク |
|---|---|---|---|
| 超短期債ETF(SHV等) | 0.3〜0.5年 | 約 −0.4% | 低 |
| 短期国債ETF(SHY等) | 1.8〜2.0年 | 約 −1.9% | 低 |
| 中期国債ETF(IEI等) | 4.0〜4.5年 | 約 −4.2% | 中 |
| 総合債券ETF(AGG/BND) | 5.5〜6.5年 | 約 −6% | 中 |
| 長期国債ETF(TLT等) | 15〜17年 | 約 −16% | 高 |
ポートフォリオのデュレーション管理
- 金利上昇が予想される局面:デュレーションの短い短期債ETFに移行し、価格下落リスクを減らす
- 金利低下が予想される局面:デュレーションの長い長期債ETFで値上がり益を狙う
- 金利見通しが不明な場合:中程度のデュレーション(3〜6年)の中期債でバランスをとる
債券ETFのデュレーションはETF発行会社のウェブサイト(iShares・Vanguard等)の「ファンド特性」欄に記載されています。日本の証券会社の外国ETF詳細ページでも確認できます。
① デュレーションは「債券の金利感応度」を示す指標——残存期間が長いほど高くなる
② 修正デュレーション×金利変化幅 ≈ 債券価格の変化率(マイナス方向)
③ 金利1%上昇:残存10年国債 ≈ −8〜9%、超長期30年 ≈ −20%超の価格下落
④ コンベクシティは非線形の補正項——大きな金利変化時に重要
⑤ 債券ETF選択時は「修正デュレーション」を確認して金利リスクを把握する