過去5年間のインフレと円安から資産をどう守れたか2026:消費者物価指数+12%・ドル円54%円安を、日本株・米国株・金・現金でどう乗り越えられたかを徹底検証
二重の購買力毀損:物価+12.4%、円安+54%が意味すること
まず、過去5年間で私たちの資産を取り巻く環境がどう変化したのかを整理します。
消費者物価指数は5年間で+12.4%上昇
総務省統計局が公表している「2020年基準 消費者物価指数(全国)」によれば、2021年平均の99.8から2025年平均の112.2へ、約12.4ポイント(+12.4%)上昇しました(出典:総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年平均」2026年1月23日公表)。
これは、2021年に100円で買えたものが2025年には約112円必要になった、ということを意味します。5年前と同じ生活水準を維持するためには、約12%多くのお金が必要になっているのです。
ドル円為替レートは約54%の円安
同時に、為替市場では円安が急速に進行しました。2021年1月の約103〜104円から、2026年8月21日には158〜159円台へ(出典:七十七銀行「米ドル対円相場(仲値)一覧表(2021年)」、外為どっとコム「2026年8月21日為替市況」)。これは約54%の円安です。
円安は輸入品の価格上昇につながります。海外旅行、輸入食品、洋書、海外サービス(NetflixやAmazon Prime等のドル建てサブスク)など、ドル建てで購入するものの実質コストは、物価上昇率以上に増加しています。
2021年1月に100万円を持っていた場合、当時の為替レート103円で約9,709ドルに相当しました。しかし2026年8月の為替レート159円では、同じ100万円は約6,289ドルにしかなりません。ドル建ての購買力は約35%低下しています(出典:マネトモ編集部試算)。
二重の購買力毀損とは
つまり、この5年間で日本国内の購買力は物価上昇により約12%低下し、海外(ドル建て)の購買力は円安により約35%低下したのです。「名目上の金額は変わらなくても、実質的に買えるものが減った」という状態が、円建て資産のみを持つ人々を襲いました。
では、異なる資産クラスに投資していた場合、この購買力毀損をどれだけ防げたのでしょうか。
検証方法:100万円を4つの資産クラスに投資したら
本記事では、2021年1月に100万円を以下の4つの資産クラスに投資し、2026年8月20日時点でどうなったかを比較します。
| 資産クラス | 投資対象 | 主なリスク要因 |
|---|---|---|
| ①現金・預金 | 円建て普通預金(金利ほぼゼロ) | 物価上昇リスク、円安リスク |
| ②日本株 | 日経平均株価に連動するETF | 株価変動リスク、企業業績リスク |
| ③米国株 | S&P500指数に連動するETF(円換算) | 株価変動リスク、為替リスク |
| ④金(ゴールド) | 金地金(円建て) | 価格変動リスク、流動性リスク |
各資産クラスの名目リターン(見かけ上の増減)を算出し、さらに消費者物価指数で調整した「実質リターン(購買力ベース)」を計算します。
本検証は過去の実績データに基づく分析であり、将来の運用成果を保証するものではありません。また、税金・手数料は考慮していません(株式売却益・配当には約20.315%の税金がかかります)。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。
現金・預金:名目は変わらず、実質は目減り
名目価値は100万円のまま
2021年1月に100万円を円建て普通預金に預けた場合、2026年8月時点でも名目上は100万円です(金利がほぼゼロのため、利息はほとんど付きません)。
実質購買力は約89万円相当に低下
しかし、消費者物価指数が2021年平均の99.8から2025年平均の112.2へ上昇したことを考慮すると、実質的な購買力は約89.0万円相当に低下しています(計算式:100万円 ÷ 1.124 = 約89.0万円)。
名目リターン:0%
実質リターン(物価調整後):-11.0%
100万円 → 名目100万円 → 実質約89.0万円相当
つまり、「何もしない」という選択は、約11%の購買力を失うことを意味したのです。さらに、海外購買力(ドル建て)では約35%低下しているため、海外旅行や輸入品を購入する際の実質コストは大幅に上昇しています。
日本株(日経平均):名目+140%、実質購買力は?
日経平均は約2.4倍に上昇
2021年1月29日の日経平均株価終値は27,663円でした。それから約5年後の2026年8月20日終値は66,216円(出典:株式ちゃんねる「2026年8月20日マーケット情報」、ZUU online「日々是相場2021年1月29日」)。約+140%、約2.4倍に上昇しました。
100万円が約240万円に
2021年1月に日経平均連動型ETFに100万円を投資していた場合、2026年8月時点で名目約240万円になっています(手数料・税金は考慮せず)。
実質購買力は約213.5万円相当
この240万円を消費者物価指数で調整すると、実質購買力は約213.5万円相当です(計算式:240万円 ÷ 1.124 = 約213.5万円)。
名目リターン:+140%
実質リターン(物価調整後):+113.5%
100万円 → 名目約240万円 → 実質約213.5万円相当
日本株は名目でも大きく上昇しましたが、その一部は円安による輸出企業の業績押し上げ効果も含まれます。トヨタ自動車やソニーグループなど、海外売上比率の高い企業は円安により円換算の売上・利益が増加し、株価を押し上げました。
米国株(S&P500):円換算+214%、為替効果が上乗せ
S&P500は米ドル建てで約2.0倍
S&P500指数は2021年1月の約3,764ポイントから、2026年8月20日には7,655ポイントへ上昇しました(出典:Yahoo Finance「S&P 500 Historical Data」、Trading Economics「United States Stock Market Index」)。米ドル建てで約+103%、約2.0倍です。
円換算では約3.1倍に
しかし、日本の投資家がS&P500に投資する場合は円をドルに換えて投資するため、為替の影響を受けます。
| 時点 | S&P500(米ドル建て) | 為替レート | 円換算価値 |
|---|---|---|---|
| 2021年1月 | 3,764ポイント | 103円/ドル | 387,692円 |
| 2026年8月20日 | 7,655ポイント | 159円/ドル | 1,217,145円 |
円換算では約+214%、約3.1倍に増加しています(出典:マネトモ編集部試算)。米ドル建てのリターン(約+103%)に、円安による為替差益(約+54%)が上乗せされた形です。
100万円が約314万円に
2021年1月にS&P500連動型ETF(円建て)に100万円を投資していた場合、2026年8月時点で名目約314万円になっています。
実質購買力は約279.4万円相当
この314万円を消費者物価指数で調整すると、実質購買力は約279.4万円相当です(計算式:314万円 ÷ 1.124 = 約279.4万円)。
名目リターン(円換算):+214%
実質リターン(物価調整後):+179.4%
100万円 → 名目約314万円 → 実質約279.4万円相当
米国株への投資は、米国株式市場の成長と円安による為替差益の両方を享受できたため、日本株を上回るリターンとなりました。
金(ゴールド):+303〜335%、インフレ・円安の両方に強い
金価格は約4.0〜4.4倍に上昇
金価格(円建て)は、2021年1月29日時点で約6,196円/gでした(出典:田中貴金属「貴金属相場推移2021年1月」)。それが2026年8月には25,000〜27,000円/g台まで上昇しています(出典:おたからや「2026年8月金価格動向解説」)。約+303〜335%、約4.0〜4.4倍です。
100万円が約403〜435万円に
2021年1月に金地金に100万円を投資していた場合、2026年8月時点で名目約403〜435万円になっています(中間値を取って約419万円とします)。
実質購買力は約372.8万円相当
この419万円を消費者物価指数で調整すると、実質購買力は約372.8万円相当です(計算式:419万円 ÷ 1.124 = 約372.8万円)。
名目リターン:+319%(中間値)
実質リターン(物価調整後):+272.8%
100万円 → 名目約419万円 → 実質約372.8万円相当
なぜ金がこれほど上昇したのか
金は実物資産として、以下の特性を持ちます。
- インフレヘッジ:通貨の価値が下がる(物価が上がる)局面で、金の価値は相対的に維持されやすい
- 通貨リスクヘッジ:金は国際的に米ドル建てで取引されるため、円安局面では円建て価格が上昇する
- 地政学リスクヘッジ:戦争・紛争・政情不安時に「安全資産」として買われる
この5年間は、①物価上昇、②円安、③地政学リスク(ロシア・ウクライナ情勢、中東情勢等)の3つが同時に進行したため、金価格は大きく上昇しました。
実質リターン比較:購買力ベースで見た勝者は
ここまでの結果を、名目リターンと実質リターン(物価調整後)で比較します。
| 資産クラス | 名目リターン | 実質リターン(物価調整後) | 100万円→2026年8月の実質価値 |
|---|---|---|---|
| 現金・預金 | 0% | -11.0% | 約89.0万円相当 |
| 日本株(日経平均) | +140% | +113.5% | 約213.5万円相当 |
| 米国株(S&P500) | +214% | +179.4% | 約279.4万円相当 |
| 金(ゴールド) | +319% | +272.8% | 約372.8万円相当 |
グラフを見ると明らかなように、購買力ベースで最も資産を守れたのは金(ゴールド)、次いで米国株、日本株の順です。現金・預金は唯一マイナスとなり、購買力を守れませんでした。
「何もしない(現金のまま持つ)」という選択が、最もリスクの高い選択だった。物価上昇と円安という二重の購買力毀損に対して、円建て現金は完全に無防備だった。
今後の資産防衛戦略:分散投資の重要性
過去5年間の実績から、今後同様のインフレ・円安局面に備えるための資産防衛戦略を考えます。
①外貨建て資産への分散
円安リスクに備えるためには、外貨建て資産(米国株・米国債・外貨預金等)を一定比率保有することが有効です。円安が進行した場合、外貨建て資産は円換算で価値が上昇します。
ただし、逆に円高に振れた場合は為替差損が発生するため、全額を外貨建て資産に振り向けるのではなく、総資産の30〜50%程度を目安に分散することが一般的です。
②株式への分散
株式は企業の成長を通じて資産を増やす手段です。特に長期保有することで、物価上昇を上回るリターンを得られる可能性があります。
日本株と米国株(または全世界株)に分散することで、特定の国・地域のリスクを軽減できます。新NISA制度を活用すれば、年間最大360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資できます。
③実物資産(金・不動産等)への分散
金や不動産などの実物資産は、インフレ局面で価値を維持しやすい特性があります。特に金は流動性が高く、少額から投資できるため、総資産の5〜10%程度を保険として保有することも一案です。
④現金・預金も一定額は必要
今回の検証では現金・預金が最も購買力を守れませんでしたが、生活防衛資金(生活費の3〜6か月分)や近い将来使う予定の資金は、元本割れリスクのない現金・預金で保有すべきです。
すべてを株式や金に投資してしまうと、急な出費や暴落局面で売却せざるを得なくなり、かえって損失を確定してしまうリスクがあります。
⑤定期的なリバランス
資産配分は一度決めたら終わりではなく、年1回程度見直す(リバランス)ことが重要です。例えば、株式が値上がりして当初の配分比率を大きく超えた場合、一部を売却して現金や債券に移すことで、リスクを適正水準に保ちます。
本記事は過去のデータに基づく分析であり、将来の運用成果を保証するものではありません。株式・金・外貨建て資産には価格変動リスク・為替リスク・流動性リスクがあります。投資判断は必ずご自身の責任で行い、不安な場合はファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。
まとめ
2021年1月から2026年8月までの約5年間、日本では消費者物価指数が+12.4%上昇し、ドル円為替レートは+54%の円安が進行しました。この「物価上昇+円安」という二重の購買力毀損に対して、各資産クラスがどれだけ防衛力を発揮したかを検証した結果、以下のことが明らかになりました。
- 現金・預金:名目は変わらず、実質購買力は-11.0%低下。物価上昇・円安に対して完全に無防備
- 日本株:名目+140%、実質+113.5%。物価上昇を大きく上回るリターンを確保
- 米国株:名目+214%、実質+179.4%。米国株の成長+円安による為替差益が上乗せ
- 金:名目+319%、実質+272.8%。インフレ・円安・地政学リスクの三重追い風で最大の防衛力
この実績から得られる教訓は、「何もしない(円建て現金のみ保有)」という選択が最もリスクが高かったということです。今後同様のインフレ・円安局面に備えるためには、外貨建て資産・株式・実物資産へ適切に分散し、定期的にリバランスを行うことが重要です。
ただし、すべての資産にはリスクがあります。株式は暴落リスク、外貨建て資産は為替リスク、金は価格変動リスクと流動性リスクがあります。ご自身のリスク許容度・投資期間・ライフプランに合わせて、無理のない範囲で資産防衛を進めてください。
💡 資産配分シミュレーターで最適なポートフォリオを見つけよう
現金・日本株・米国株・金など、複数の資産クラスをどう配分すればリスクとリターンのバランスが最適化されるか、シミュレーターで試算できます。
シミュレーターを使ってみる →本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の推奨や投資勧誘を目的とするものではありません。記載されている情報は2026年8月21日時点のものであり、最新の情報と異なる場合があります。投資判断はご自身の責任で行ってください。株式・外貨建て資産・金等には価格変動リスク・為替リスク・流動性リスクがあり、元本割れの可能性があります。過去の運用実績は将来の運用成果を保証するものではありません。税金(株式売却益・配当には約20.315%の税金がかかります)や手数料は考慮していません。投資に関する最終判断は、必ずご自身で行うか、ファイナンシャルプランナー等の専門家にご相談ください。