金利上昇で不動産価格はどうなる?2026:収益還元法の理論と人口減少データから読み解く今後の価格推移予測
不動産価格の決定メカニズム:収益還元法とキャップレートの関係
まず、「金利が上がると不動産価格が下がる」と言われる理論的な根拠を確認しましょう。不動産の価格評価には複数の手法がありますが、投資用不動産や収益物件の評価で最もよく使われるのが収益還元法(直接還元法)です。
収益還元法の計算式
収益還元法では、不動産価格を次のように計算します。
| 計算式 | 説明 |
|---|---|
| 不動産価格 = 年間純収益(NOI) ÷ キャップレート | NOI(Net Operating Income)は家賃収入から管理費・固定資産税等を差し引いた純収益。キャップレート(還元利回り)は投資家が要求する期待利回り。 |
例えば、年間純収益が500万円の物件に対して、投資家が5%の利回りを要求する場合、不動産価格は次のようになります。
500万円 ÷ 0.05 = 1億円
金利が上がるとキャップレートも上がる
キャップレートは「リスクフリーレート(無リスク金利)+ リスクプレミアム - 期待成長率」に分解されます。長期金利(10年国債利回り)が上昇すると、リスクフリーレートが上昇し、それに連動してキャップレートも上昇します。
同じ年間純収益500万円の物件でも、キャップレートが5%から6%に上昇すると、価格は次のように変化します。
| キャップレート | 不動産価格 | 変化率 |
|---|---|---|
| 5% | 1億円 | — |
| 6% | 8,333万円 | -16.7% |
このように、キャップレートが1%ポイント上昇すると、NOIが一定でも価格は約17%下落します。ダイヤモンドオンラインの試算では、金利1%上昇で不動産価格は理論的に約20%下落しうるとされています。2026年の住宅ローン基準金利は0.15%引き上げられたため、理論的には不動産価格は約3%下がる計算になります。
理論と実際のギャップ
ただし、この理論値はあくまで「他の条件が一定」の場合です。実際には、金利上昇と同時にインフレが進行して賃料が上昇すれば、NOIも増加するため価格下落が相殺される可能性があります。また、立地や需給バランスによっても価格は変動します。次の章では、2026年の実際の金利動向と市場への影響を見ていきましょう。
2026年の金利動向:長期金利3%突破と住宅ローンへの影響
長期金利の推移
2026年9月1日、日本の長期金利(新発10年物国債利回り)は3.005%を記録し、1996年9月以来約30年ぶりに3%の大台を突破しました。この背景には、世界的なインフレと各国中央銀行の金融引き締めがあります(マネトモ既掲載の記事316「世界同時債券安」で詳述)。
住宅ローン金利の上昇
長期金利の上昇は、住宅ローン金利にも波及しています。2026年9月の主要金融機関の住宅ローン金利は以下の通りです。
| 金融機関・商品 | 金利(2026年9月) | 動向 |
|---|---|---|
| フラット35(買取型) | 3.460% | 前月から引き上げ |
| 変動金利(ドコモSMTBネット銀行) | — | 引き上げ |
| 変動金利(楽天銀行) | — | 引き上げ |
| 変動金利(三菱UFJ銀行) | — | 引き上げ |
| 変動金利(三井住友銀行) | — | 引き上げ |
固定金利だけでなく、変動金利も上昇傾向にあります。
金利上昇が不動産需要に与える3つの経路
金利上昇は、次の3つのルートで不動産需要を押し下げます。
- 借入可能額の縮小:金利が上がると、同じ月々の返済額でも借りられる金額が減少します。例えば、月10万円の返済で35年ローンを組む場合、金利1%なら約3,500万円借りられますが、金利2%では約3,100万円に減少します。
- 審査の厳格化:金融機関は審査金利(3.0〜4.0%が目安)で返済能力を審査します。金利上昇により、同じ年収でも審査に通りにくくなります。
- 購入意欲の低下:月々の返済負担が増えるため、購入を先送りする層が増えます。
賃料上昇という相殺要因
一方で、金利上昇は通常インフレとセットで起こります。実際、2026年の賃料動向は次の通りです。
| 地域 | 賃料上昇率(2023年比) |
|---|---|
| 東京23区 | +4〜5% |
| 大阪・名古屋 | +2〜3% |
賃料が上昇すれば、収益還元法のNOI(年間純収益)が増加するため、キャップレート上昇による価格下落圧力を一部相殺します。このバランスが、都心部と地方で大きく異なることが、価格二極化の要因となります。
人口減少という構造要因:2070年に8,700万人、立地適正化計画971都市の意味
日本の人口減少トレンド
不動産価格を考える上で、金利以上に長期的なインパクトを持つのが人口減少です。総務省統計局の人口推計によれば、2026年6月1日現在の日本の総人口は1億2,285万人で、前年同月比53万人減少(-0.43%)しています。
国立社会保障・人口問題研究所の推計(令和5年推計)では、2020年の1億2,615万人が2070年には8,700万人まで減少する見通しです(約3割減、出生中位・死亡中位推計)。
立地適正化計画とコンパクトシティ政策
人口減少に対応するため、国土交通省は立地適正化計画を推進しています。これは、居住誘導区域・都市機能誘導区域を定め、コンパクトなまちづくりを進める制度です。
令和8年(2026年)3月31日時点で、971都市が立地適正化計画について具体的な取組を行っており、このうち685都市が計画を作成・公表済みです。
この政策が意味するのは、「行政が居住を推奨しないエリア」が明確化されるということです。誘導区域外では、公共投資が抑制され、インフラの維持コストが高まり、生活利便性が低下していく可能性があります。
空き家率の上昇
人口減少は、すでに空き家問題として顕在化しています。令和5年(2023年)の住宅・土地統計調査によれば、全国の空き家率は13.8%で過去最高を更新しました。全国の総住宅数6,504万7千戸のうち、空き家総数は900万2千戸に達しています。
今後の価格推移予測:都心部と地方の二極化はどう進むか
ここまで見てきた「金利上昇による理論的な価格下落圧力」と「人口減少による需要減少」という2つの要因を統合すると、今後の不動産価格は立地によって大きく二極化していくと予測されます。
都心部・駅近(強い立地)のシナリオ
東京23区・大阪・名古屋などの大都市圏の中心部、および駅徒歩5分以内の駅近物件は、以下の要因により価格が底堅く推移すると考えられます。
- 人口・雇用の集中:立地適正化計画により、居住誘導区域内への人口集中が進む。
- 賃料上昇:インフレ+人口集中により賃料が上昇し、NOIが増加。
- 外国人需要:訪日観光客・外国人労働者の増加により、都心部の賃貸需要が堅調。
- 資産性の認識:「立地の良い不動産は減らない」という認識が広がり、買い控えが起きにくい。
実際、首都圏中古マンション成約㎡単価は2026年1月に86.99万円/㎡に達し、1990年9月のバブル期最高水準を約35年ぶりに上回りました。
地方・郊外(弱い立地)のシナリオ
一方、地方都市の郊外や居住誘導区域外のエリアでは、次のような複合要因で価格下落圧力が強まります。
- 人口減少による需要減:若年層の流出・高齢化により、住宅需要が構造的に減少。
- 賃料の伸び悩み:空室率上昇により賃料が上がらず、NOIが増加しない。
- 金利上昇の直撃:賃料上昇による相殺効果がないため、キャップレート上昇が価格下落に直結。
- インフラの劣化:公共投資抑制により道路・上下水道の維持が困難になり、生活利便性が低下。
モデルケース:都心vs地方の10年後価格推移シミュレーション
同じ5,000万円の物件が、都心と地方でどう推移するかをシミュレーションしてみましょう。
| 項目 | 都心部(駅徒歩5分) | 地方郊外(車必須) |
|---|---|---|
| 2026年価格 | 5,000万円 | 5,000万円 |
| 賃料動向(10年) | +20%(年率1.8%) | -10%(年率-1.1%) |
| キャップレート変化 | 5% → 5.5%(+0.5%) | 6% → 7%(+1%) |
| 2036年価格(想定) | 約5,450万円(+9%) | 約3,860万円(-23%) |
このシミュレーションは、賃料動向とキャップレート変化が立地によって大きく異なることを前提としています。実際には、個別の物件・地域によってさらに細かな差が生じます。
購入判断のチェックポイント:立地・賃料・資産性の3軸で考える
金利上昇局面で不動産を購入する際、後悔しないために確認すべき3つのポイントを整理しましょう。
① 立地:居住誘導区域内かどうか
自治体の立地適正化計画を確認し、居住誘導区域内に該当するかをチェックしましょう。各自治体のホームページや国土交通省の「立地適正化計画作成の取組状況」で確認できます。
居住誘導区域外の物件は、10〜20年後に公共サービスが縮小するリスクがあります。
② 賃料:同エリアの賃料動向
仮に自己居住用でも、「いざというときに貸せるか」「貸した場合の家賃収入はローン返済をカバーできるか」を試算しておくことで、資産性の目安になります。
不動産ポータルサイトで同エリア・同条件の賃料相場を調べ、次の計算をしてみましょう。
想定年間家賃収入 ÷ 物件価格 = 表面利回り
表面利回りが4%未満の場合、将来的な価格下落リスクが高い可能性があります。
③ 資産性:20年後も需要があるか
次のチェックリストで、長期的な資産性を確認しましょう。
- 駅徒歩10分以内(できれば5分以内)か?
- 最寄り駅は複数路線が利用できるか?
- 周辺に大学・病院・商業施設があるか?
- 地域の人口推計(自治体の将来推計人口)は横ばい以上か?
- ハザードマップで災害リスクが低いエリアか?
これらの条件を多く満たすほど、金利上昇・人口減少のダブルパンチに耐える力があります。
資産シミュレーションで将来の選択肢を可視化
不動産購入・賃貸継続・投資運用など、複数の選択肢を数値で比較できるシミュレーターをご用意しています。金利・賃料・インフレ率を自由に設定して、あなたに合った判断の参考にしてください。
シミュレーターを使ってみる →まとめ:金利上昇局面で後悔しない不動産選び
本記事のポイント
- 収益還元法の理論では、金利1%上昇で不動産価格は約20%下落しうる(キャップレート上昇が要因)。
- 2026年の金利動向:長期金利3%突破、住宅ローン金利も上昇。借入可能額縮小・審査厳格化・購入意欲低下という3つの経路で需要を押し下げる。
- 人口減少と立地適正化:2070年に総人口8,700万人(約3割減)、971都市で居住誘導区域を設定。空き家率13.8%で過去最高。
- 価格推移の二極化:都心部・駅近は賃料上昇が金利上昇を相殺し底堅い一方、地方・郊外は人口減少と金利上昇のダブルパンチで下落圧力が強い。
- 購入判断の3軸:①居住誘導区域内か、②賃料動向(表面利回り4%以上が目安)、③20年後も需要があるか(駅近・複数路線・周辺施設)。
金利上昇は確かに不動産価格の下落要因ですが、それが実際の価格にどう反映されるかは立地・賃料動向・人口動態によって大きく異なります。「金利が上がったから一律に買い控える」のではなく、個別の物件が持つ長期的な資産性を見極めることが、後悔しない判断につながります。
特に、人口減少が加速する日本では、「どこに住むか」が「いつ買うか」以上に重要になっていきます。本記事で紹介した収益還元法の計算式・立地適正化計画の確認・賃料動向のチェックを、ぜひ購入判断の参考にしてください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の投資判断・購入判断への推奨や助言を行うものではありません。不動産の購入・売却・賃貸等の判断は、ご自身の責任において行ってください。記事内の数値・試算はあくまで概算であり、実際の価格推移・収益を保証するものではありません。また、税務・法務に関する個別の相談は、税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
本記事の情報は2026年9月9日時点のものであり、法令・制度・金利は今後変更される可能性があります。最新の情報は、国土交通省・総務省・金融機関等の公式サイトでご確認ください。